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『VIVANT』第17話 感想・考察|「下された非情な決断」の正体と、乃木が初めて頼った相手

2026年ドラマ

※第17話のネタバレを含みます。

第17話を見終わって、いちばん強く残ったのはここでした。

乃木が、初めて人に助けを求めた。

今まで1人で完璧にやってきた人が、今回は自分の力だけでは足りなかった。そこへ手を伸ばしてくれたのが、ノコルでした。

『VIVANT』第17話の基本情報と、囚われている5人

地下室に差し込む一筋の光
  • 放送日:2026年9月6日(日)
  • 放送局:TBS 日曜劇場
  • サブタイトル:第十七話「下された非情な決断 試される兄弟の愛!?」

※第1シーズンから見返したい方は、『VIVANT』はどこで見られる?TVer・TBS FREE・U-NEXTの配信範囲を比較にまとめています。

冒頭のナレーションで、前提が整理されます。警視庁公安部外事4課の野崎守が、テント潜入作戦に参加していた別班員――高田・和田・熊谷・廣瀬、そして黒須の5名をシンシーに売り飛ばした、と。

この5人がシャキ城に囚われている、というのが第17話のスタート地点です。移送されたように見えて、それはフェイクでした。

野崎自身も捕らえられ、ドラムも捕まります。ただ、シンシー側は2人を殺せません。テントの情報が欲しいからです。

そして、それを一番よく分かっているのが野崎でした。「心配するな。やつらは俺らを殺せない」とドラムに言い、相手に向かってこう並べてみせます。自分たちを殺せば、望んでいるテントの情報は手に入らなくなる。テントに関与していた人間が誰で、いまどこで何をしているのか。それを一番よく知っているのは乃木憂助、次が自分、その次がドラムだ、と。

自分とドラムの値札を、相手に教えているんです。殺されない立場を、自分で作っている。

野崎は、なぜ5人を売ったのか

ここで引っかかるのが、冒頭のナレーションです。野崎は5人を売り飛ばした、と言い切られている。でも野崎は潜入捜査でした。だったら、あの5人はどうなるんだろう。

野崎の「やつらは俺らを殺せない」は、自分とドラムの話です。でも理由は同じはずです。テントの情報が欲しいから殺せない。5人が拷問を受けているのも、聞き出したいことがあるからです。

だとしたら、売ったのではなく、殺されないぎりぎりの場所に置いた、ということなのかもしれません。情報を持っている限り、5人は生かされる。ひどい賭けだけれど、筋は通ってしまいます。

……いや、それでも5人は拷問を受けています。そこまで計算していたなら、それはそれでこわい人です。

「黒須を見殺しにできません」――乃木が初めて助けを求めた

窓辺に立つ後ろ姿と、机に並んだ5枚の写真

終盤、乃木が上官の前でこう話します。

「しかし自衛隊に入隊し、二人目の友人ができました。それが黒須です」
「以前の任務から一緒だった黒須は、誰よりも私を信頼してくれました。そんな彼の気持ちに報いようと、私も持っている全てを伝えてきました」

そして、「黒須を見殺しにできません」。

任務の報告ではなく、友人の話として言っている。乃木がここまで自分の感情を前に出した場面が、今まであったでしょうか。

続けて乃木は、囚われている5人の名前を全部呼びます。高田さん、和田さん、廣瀬さん、熊谷さん。「任務のために私の銃撃を受け重傷を負い、さらに苦難な状況に陥ってもなお、拷問に耐えている」と。

数ではなく、名前で呼ぶ。ここが今回の乃木でした。

「下された非情な決断」は、救出の断念ではなく毒殺だった

夜明け前の会議室に置かれた一枚の書類

サブタイトルの「下された非情な決断」を、私は救出をあきらめることだと思っていました。

でも、違いました。

司令が決めていたのは、囚われている5人を毒殺することです。

理由も語られます。別班員が救出に向かえば、その別班員もまた捕まる。そうなればもっと機密が漏れる。だから、その前に口を封じる。

筋は通っています。通っているから、こわい。

ここで乃木に助言する人物が、逃げ道を示します。救助に向かうのが別班員でなければいい、と。特殊作戦群を出せば国際問題になる、と返す乃木に、その人はこう言います。それが君の仲間だったらと言ってるんだ、と。テントのことです。

少なくとも彼が動けば最強部隊Y2Kも動かせる、頼んでみろ、と背中を押し、自分のエージェント「ゲルン」も出すと言う。そして最後は、君の命もまた大切な人が守りたい命だ、必ず生きて戻れ、と送り出しました。

ノコルの「だったら何で単刀直入に言えないんだよ」

夜の砂漠で、二つの灯りを結ぶ細い光の線

第17話は、ずっと「言えたか、言えなかったか」の話をしています。

黒須は、乃木に本当のことを言いませんでした。回想の乃木の言葉《俺にだけは…言ってほしかった》が、それを示しています。黒須も1人で背負っていた。

野崎は、殺されそうになって、やっと自分から潜入だと明かしました。隠し通すのをやめた。

そしてノコルは、電話で乃木にこう切り出します。やはり、血のつながっていない兄弟だったんだな、と。兄がテントに来たばかりの頃は、父が心変わりするんじゃないかと不安で、憎しみも嫉妬もあった。でも今は、実の兄弟以上の兄ができたと神に感謝している。だが兄さんは、そうではなかったんだな

乃木は否定します。兄弟がいない自分に弟ができた、今まで味わったことのない喜びを感じている、と。それを聞いたノコルの返しが、この回でいちばん刺さりました。

《だったら何で単刀直入に言えないんだよ。黒須たちを助けに行く、手伝えって》
《当たり前だ。テントは全勢力をかけて兄さんに協力する》

ノコルが怒っているのは、頼まれたことではなく、頼ってもらえなかったことです。

サブタイトルの「試される兄弟の愛」は、愛せるかどうかではなく、頼れるかどうかを試されていた、ということなのかもしれません。

敵の側も、愛で動いていた――樊と劉の会話

格子窓のある暗い部屋に置かれた二脚の椅子

もうひとつ、見逃せない場面があります。15分すぎ、シンシー側の会話です。

樊(ハン)が劉に、こう聞きます。

「彼をまだ愛してるの?」

劉は「はい」と答えます。この「彼」は、野崎のことです。

その直前、劉は野崎の尋問を「それ、私にやらせていただけませんか?」と自分から志願していました。組織の命令ではなく、自分の気持ちで動いている。樊はそれを分かったうえで、「いいわ、やってみなさい」と許可します。

さらに劉は、その前にこうも聞いています。テントとは中央アジアで暗躍していたテロ組織ですよね、その情報は我々にとってそれほど重要なものなのですか、と。

組織の中でも、なぜテントの情報がそこまで重要なのかが共有されていない。上から降りてきた任務なら、こんな確認は出ないはずです。単独捜査のように見えました。

そして次回予告で、劉がこう言います。

「究極の愛は人を狂わせるのです」

野崎とドラムが囚われている映像にかぶせて、この言葉。

こうして並べると、第17話は全員が「愛」で動いている回でした。乃木は黒須たちへの情で、ノコルは兄弟の愛で、劉は野崎への愛で。

愛で動いていないのは、味方であるはずの司令だけです。

ベキたちの葬儀で、子どもの写真まで撮られていた

荒野の墓地跡に伸びる小さな影

あとから効いてきそうな会話が、もうひとつあります。16分すぎ、乃木とノコルの通信です。

シンシーが核融合の情報を得るためにテントの何かを調べていた、という話に、ノコルはこう答えます。テントの作戦はベキ・バトラカ・ピヨの3人が中心で、自分はフローライト事業のほうにいたから、その作戦には参加していなかった。ただ、情報は細かいところまで会議で共有していた。それが決まりだったから。それなのに、核融合なんて言葉は一度も耳にしたことがない、と。

会議で全部共有していたのに、聞いたこともない。ということは、核融合の話はベキ・バトラカ・ピヨの3人しか知らなかったことになります。テントの中にも、ノコルに知らされていない層があった。

そしてノコルは、気になることがあると言います。ベキたちの葬儀で、目つきの鋭い連中がやたらと参列者の写真を撮っていた、という報告を受けた。それに大人だけじゃなく、子どもまでも

子どもまで。

ここで、さっきの話が効いてきます。核融合を知っていたのは3人だけ。そして、その3人はもう死んでいます。

もう、誰にも聞けないんです。だから葬儀に来た人を片っ端から撮った。ベキが誰かに何かを託していたなら、その相手は葬儀に来るはずだから。

そう考えると、子どもまで撮っていた理由まで分かってしまいます。

同じ第17話で、ジャミーンの「善悪を見抜く力」が語られます。サヴァン症候群の類型かもしれない、という説明のされ方で、確定した診断としては描かれていません。それでも、検査で犯罪者を見分けたという話が出てきます。

考えすぎかもしれないけれど、葬儀で探されていたのはジャミーンなんじゃないか、と思いました。

作中では、この二つは結び付けて説明されていません。でも、もしそうだとしたら、こわいです。

全部、乃木を呼ぶための罠だったら

少しだけ開いた城の門から漏れる光

ここまで書いていて、いやな想像をしました。

野崎が言った順番が引っかかっています。テントのことを一番よく知っているのは乃木憂助、次に俺、ドラムだ、と。

つまり、シンシーが本当に欲しいのは乃木です。

5人を生かしたまま城に置いて、移送はフェイクで、公式のあらすじによれば暗号まで解読されている。それって、乃木が助けに来るのを待っているようにも見えます。

助けに行くしかない。でも、その先で何が待っているんだろう。

櫻井が最後に許した理由と、次回への気持ち

夜明けの砂漠にまっすぐ伸びる一本の道

乃木は最後、櫻井のところへ奪還の許可をもらいに行きます。黒須たち5名を取り返したい。参加する別班員は自分だけ。自分のことはすでにシンシーに知られているから、もし拿捕された場合は即座に自ら命を絶つ。いかなる結果になっても迷惑はかけない、と。

櫻井の返しは冷たい。「決定に背いてなお、自分なら全てを解決できるとお思いですか。ごう慢な考えですね」。

でも「他に誰が参加するのですか」と聞かれた乃木が「私の仲間です」と答えたあと、櫻井の言葉が変わります。命をかけてテント壊滅を目指したあなたに、今度はそのテントが命をかけて協力する、と。

「何か不思議な力、そう天運を感じますね」
「禍福は糾える縄の如し」

そして「不思議な天運にかけてみるのも、また一興かもしれませんね」と言って、救助を認めてくれました。

櫻井も乃木には一目置いているから、乃木の仲間を助けるのは良かったのではないかと思います。

ただ、禍福は糾える縄の如し、は、幸せと不幸が縄のようにかわるがわるやってくる、という意味だそうです。櫻井はそれを、テントを壊したことが今の助けになった、という意味で使いました。

でもこの言葉、逆も言っているんですよね。今の幸運も、いつか反対側に回る、と。

「一興かもしれませんね」と言ったあの人は、そこまで見ていた気がします。

乃木は野崎も信頼していると思う。ドラムも。たくさん、仲間ができてきている。この人間味のある感じが好きです。

(この大切な仲間が裏切らないことを祈ります)

来週は救出劇。「究極の愛は人を狂わせるのです」が、どこへ向かうのか。

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