この記事では、『VIVANT』第2シーズン(第11話〜第14話)の内容に触れています。未視聴の方はご注意ください。
第2シーズンに入ってから、見たことのない景色ばかり出てきます。
炎の形をした高層ビル。土色の壁が続く古い街。赤とピンクの縞模様の山。第1シーズンのモンゴルとも、日本とも違う。
第14話で「アゼルバイジャン」という国の名前が出てきたとき、あ、と思いました。去年、大阪万博でパビリオンに入った国です。あのとき、炎の形をした建物(フレイムタワー)が、国の象徴として紹介されていました。
ただ、劇中で舞台になっているのはゴルバド共和国。こちらは地図で探しても出てきません。
調べていくうちに、この国が「ヨーロッパとアジアの境目」にある国だと分かりました。そして、その境目という言葉が、このドラマの中身とそのまま重なっていることに気づきました。
ゴルバド共和国は実在する?架空の国だけど、撮影した国は実在する

先に答えを書きます。ゴルバド共和国は実在しません。『VIVANT』のために作られた架空の国です。
第1シーズンのバルカ共和国と同じですね。あのときはモンゴルで撮影して、架空の国に仕立てていました。
第14話では、ゴルバド共和国についてこう説明されていました。アゼルバイジャンの隣国。かつてはシルクロードの通過国で、いまは中国の一帯一路構想に協力している。インフラ整備で巨額の融資を受けていて、中国とのつながりが深い国。
そして撮影が行われたのが、その説明に出てきたアゼルバイジャンです。こちらは実在する国です。
しかも、かなり本格的なロケでした。報道によると、堺雅人さんら主要キャストが2025年8月から2か月間、現地に滞在。国内8か所で撮影し、アゼルバイジャンの文化省・行政・警察が全面的に支援して、映像制作大手のバクー・メディア・センターも協力したそうです。
2か月。国をあげて受け入れている、という感じがします。
アゼルバイジャンはどこにある?ヨーロッパとアジアの境目

地図で言うと、カスピ海の西側。北にロシア、南にイランがあります。

この場所が、東ヨーロッパと西アジアの交差点と呼ばれています。ジョージア、アルメニアと合わせてコーカサス地方。カスピ海と黒海に挟まれた場所です。
ヨーロッパなのか、アジアなのか。どちらとも言いきれない。
そこが面白いところで、この国では東西の文化が交わっています。宗教も、建物も、食べ物も、片方だけの色になっていません。
かつてシルクロードが通っていた土地でもあります。東からも西からも人が来て、通り過ぎて、何かを置いていった。それが積み重なって、いまの姿になっている。
劇中のゴルバド共和国も「シルクロードの通過国」という設定でした。架空の国ですが、この土地の性格をそのまま借りているのが分かります。
風の吹く街バクー|炎のビルと世界遺産の旧市街が同じ場所にある

首都はバクー。カスピ海に面した街です。
名前の意味は、ペルシャ語で「風の吹く街」。海から風が吹き抜けるので、そう呼ばれるようになったそうです。
この街のすごいところは、正反対のものが同じ場所に立っていることです。
ひとつはフレイムタワー。炎の形をした3棟の高層ビルで、夜になると光ります。近未来的で、この国の新しい顔です。万博のパビリオンでも、この建物が国の象徴として紹介されていました。
もうひとつ、ヘイダル・アリエフ・センターという建物もあります。直線がひとつもない、白い波のような形。こちらもバクーの新しい顔です。

もうひとつは旧市街イチェリ・シェヘル。城壁に囲まれた古い街で、世界遺産です。中には15世紀のシルヴァンシャー宮殿があります。アゼルバイジャン建築の最高傑作と言われる建物。見張り台として建てられた乙女の塔も、この中にあります。

炎の形をしたビルと、何百年も前の宮殿。それが同じ街の、歩いて行ける距離にある。
「先鋭的な建造物」と「歴史ある宗教建築」が並んでいるという言い方が、いちばんしっくりきます。
それから、バクーの地下鉄も撮影に使われています。旧ソ連時代に整備されたもので、装飾がとても美しいそうです。ソビエトの時代があったことも、この国の歴史のひとつなんですね。
もうひとつ、この国には「火の国」という呼び名があります。火を崇めるゾロアスター教(拝火教)が信仰されていた土地だからです。地面から自然にガスが噴き出して燃え続ける場所があって、それを神聖なものとして扱ってきた歴史があります。
アゼルバイジャンの5つの世界遺産|砂漠も森も山の村も

この国には世界遺産が5つあります。並べてみて驚きました。中身がまったく違うんです。
1. 城壁都市バクー、シルヴァンシャー宮殿、及び乙女の塔(2000年登録)
さきほどの旧市街です。街ごと世界遺産になっています。
2. ゴブスタンの岩絵の文化的景観(2007年登録)
バクーから南へ行った半砂漠地帯。ここには6,000点を超える岩絵が残っています。数万年にわたって描かれ続けたもので、狩りの様子や動物、船などが彫られています。
それと、泥火山。地下から固まっていない泥が地面に吹き出してくる、珍しい現象が見られる場所です。
ここでひとつ、ぞくっとする事実があります。岩絵に描かれているのは、水牛やヤギ。いまは半砂漠なのに、描かれた当時、この土地は湿っていたからです。
砂漠と緑が、場所だけでなく、時間の中でも入れ替わっている。

3. シェキの歴史地区とハーンの宮殿(2019年登録)
山のほうにある街です。18世紀初頭に建てられたペルシャ風の建築が美しいところ。
そしてこの街には、シェキのキャラバンサライがあります。キャラバンサライとは、シルクロードを行き来する隊商が泊まった宿のこと。コーカサス最大級のものが、ここに残っています。
第2シーズンの告知動画にも登場した場所です。
商人たちが荷物を降ろし、ラクダを休ませ、一晩を明かした建物が、いまも建っている。そこで日本のドラマを撮っている。不思議な感じがします。
同じシェキには、ジュマ・モスクもあります。743年建設。アゼルバイジャン最古のモスクです。

4. ヒルカニアの森林群(2023年登録・イランと共有)
4つめが、森です。カスピ海の南側に広がる森林で、イランと共有している自然遺産。
砂漠の世界遺産と、森の世界遺産。それが同じ国に並んでいます。

「荒々しい砂漠」と「緑豊かな山脈」が両方あるというのは、こういうことなんですね。ガバラのように、山と湖に囲まれたリゾート地もあります。
5. キナルグ人の文化的景観と移牧の道(2023年登録)
そして5つめが、山の上の村です。
コーカサス山脈の南側、ロシアとの国境に近い高地にあるキナルグ村。標高は2,300メートルあります。
ここに、4,000年前から人が住んでいます。青銅器時代からです。
家の造りが変わっていて、ある家の屋根が、そのまま隣の家の玄関先になっているそうです。段々になった斜面に、村がへばりつくように建っている。
そして村の人たちは、自分たちだけの言葉を話します。
もうひとつ、この村には「移牧」という暮らしがあります。冬は低地に降りて家畜を養い、春になると山の村へ戻ってくる。それを1000年以上続けてきました。その行き来する道すじごと、世界遺産になっています。
東からも西からも人が通り過ぎていった国で、この村だけは、何も通り過ぎなかったのかもしれません。
そのほか、赤・ピンク・白の渦を巻いたような縞模様の岩肌が続くキャンディケインマウンテンも撮影に使われました。名前のとおり、杖の形のキャンディみたいな山です。
番組が明かしたロケ地|ラマナ城・ガバラ国際空港・ラヒジ村・クルズ村

ここから先は、U-NEXTで配信されている『VIVANT(2026) ナビ』で紹介されていた撮影地です。番組を見ないと分からない場所ばかりでした。
ラマナ城
バクーの近く、ラマナ村にある石造りの要塞です。番組では12世紀ごろに建てられたと紹介されていました。(年代には諸説あり、14世紀という記録もあります)
シルヴァンシャー朝が、カスピ海から攻めてくる敵からバクーを守るために築いた城のひとつ。岩場の上に、高さ15メートルの四角い塔が立っています。
ガバラ国際空港
ここではプライベートジェットを使って撮影されたそうです。
ラヒジ村
アゼルバイジャンでもっとも古い集落のひとつ。1,000年ほど前にペルシアから移り住んだ人たちの村で、いまもペルシア語に近い言葉が話されています。
近くに銅の鉱山があったため、昔から銅細工の村でした。その技術は2015年にユネスコの無形文化遺産に登録されています。石畳の道を歩くと、いまも工房から金属を叩く音が聞こえてくるそうです。
そしてこの村では、本物の村人50人がエキストラとして出演したとのこと。
クルズ村
標高2,000メートルにある集落です。切り立った崖の上に建っていて、人口は368人。
ここでも、村の人たちは独自の言葉(クルズ語)を話します。自家用車では行けません。徒歩か、四輪駆動車だけ。
さきほど世界遺産として紹介したキナルグ村も、同じグバの山の中にあります。あの山には、外から届かない言葉を守ってきた村が、いくつもあるということですね。

砂漠での撮影
砂嵐が来て、撮影が中止になることもあったそうです。
そして番組によると、物語の舞台は10か国以上。第2シーズンは、そこまで広がっていく話のようです。
チャイとジャム|この国の暮らし

景色だけでなく、暮らしのほうも書いておきたいです。
アゼルバイジャンの人は、とにかくお茶を飲みます。
家に招かれると、まず「チャーイ?(お茶は?)」と聞かれるそうです。話はそれから始まる。おもてなしの一杯を飲んで、ひと息ついてから本題に入る。
そして紅茶には、必ず手作りのジャムが添えられます。
チェリー、バラ、アンズ、ブラックベリー、プラム、リンゴ、モモ。どの家庭でも作っていて、家ごとに味が違うそうです。
バラのジャム。想像がつかないけれど、おいしそうです。
紅茶を飲みながらジャムを食べる。砂糖を入れるのではなく、ジャムを別に食べるところが日本と違いますね。お隣のトルコが紅茶の消費量世界一で、その影響もあるようです。
こういう話を知ると、画面に映る街の見え方が変わります。あの建物の中で、誰かがチャイを出しているんだな、と。
なぜこの国が選ばれたのか|境目の国で、どちら側か分からない人たちを撮る

ここからは、私が思ったことです。
この国のことを調べていて、あることに気づきました。舞台と物語が、同じ形をしている。
アゼルバイジャンは、ヨーロッパでもアジアでもある国です。どちら側とも言いきれない。東からも西からも影響を受けて、両方が混ざったまま今日まで来ている。
そして第2シーズンで描かれているのは、どちら側の人間なのか分からない人たちです。
野崎さんは日本を裏切ったのか、それとも潜入しているのか。第14話まで見ても、まだ決められません。新庄は本当に死んだのか。誰が味方で、誰が敵なのか。
境目にいる人たちの話を、境目にある国で撮っている。

劇中のゴルバド共和国も、シルクロードの通過国でありながら、いまは中国と深くつながっている国という設定でした。東と西のあいだで、どちらにも寄れる場所。
偶然かもしれません。ロケ地としての景色の良さで選ばれただけかもしれない。
でも、あの土色の街並みと、炎の形をしたビルが同じ画面に出てくるのを見ていると、この国でなければいけなかったんじゃないかと思えてきます。
タイでも撮影している|第2シーズンのもうひとつのロケ地

アゼルバイジャンばかり書いてきましたが、タイも第2シーズンのロケ地です。
バンコクのワット・パクナムとワット・アルン。パタヤのサンクチュアリー・オブ・トゥルースとカオシーチャン大仏壁画。
金色の仏塔と、砂漠の岩山と、炎の形をしたビル。ずいぶん遠いところまで連れていかれる話になってきました。
ちなみに、この2つの国のロケ地をめぐるTBS公認のツアーも出ています。すぐには行けないけれど、あると知っているだけで画面の見え方が少し変わります。あの景色は本当にあって、行こうと思えば行ける場所なんだ、と。
第15話も、この景色の中で物語が進んでいきます。野崎さんがどちら側の人間なのか、そろそろ分かるでしょうか。
関連記事
参考
- 『VIVANT(2026) ナビ』(U-NEXTで配信中)
- 日曜劇場『VIVANT』第2シーズン 公式ツアー特集|阪急交通社
- 【VIVANT第2シーズン①】ロケ地のアゼルバイジャン、政府が撮影に全面協力(佐々木正明・Yahoo!ニュース エキスパート)

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